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「話すことは放すこと」
2025年9月09日
先日、ある大学で教師をされている50代Aさんの講演会に参加しました。
演題は、「癌によって得た自由、自分を解放する力」です。 どちらかというと
口数が少なく一人遊びが好きだった子ども時代をへて、東京の大学に進学し教師
となったAさん。
しかし仕事を始め充実感たっぷりだったAさんに訪れたのは、「30代半ばでの
乳癌宣告」でした。
診断を受けた時のショックやその事実を受け入れられない自分、そんな自分と家
族との間に生じた気持ちのすれ違い、そしてその後の検査や治療にいたるまでの
辛さをひしひしと話されるAさんの姿に、おもわず私も涙が零れそうになりまし
た。
しかしそんなAさんが立ち直るきっかけになったのは、同じ乳癌の経験を持つB
さんとの出会いでした。
「同じ病気を経験されたBさんにだったら私の本音を話せるかもしれない」。
「若いのにたいへんね」などと同情されながら自然と病気を隠し生活していたそ
れまでのAさんにとって、心が動いた瞬間だったそうです。
この公園で私が最も印象に残ったのは、Aさんの「話すことは放すこと」とい
うフレーズでした。
今まで人に話せなかった辛い気持ちをBさんと分かち合うすなわち「話す」こと
で、少しずつ心も軽くなり、気持ち自体も「放す」方向へ変えていくことができ、
ありのままの自分を素直に受け入れられたというAさんの言葉に、感銘を受けま
した。
日々の施術の中で来院される方々の話をお聞きする事が多い私ですが、仕事と
は関係なくどちらかというと若い頃からあまり自分の気持ちを人に開放するタイ
プではありませんでした。
しかしこの公演後に久々に会った有人と会話のキャッチボールを交わす中でふと
気づいたことがあります。
それは、「私も昔より自分の気持ちを素直に人に言えるようになったかもしれな
い」ということです。
それが例え辛かった事であっても、恥ずかしかった事であってもです。
ですがそうやって自分が信じられる人に聞いていただくと、過去あるいは現実が
すぐに返られるわけではありませんが、ふと心が軽くなるのを実感しました。
「年齢と共に、解放する力って身についていくのかな」。そんなふうにも感じた
一時でした。
皆さんも日々の生活で様々なことがあると思います。
人に言いにくいこともあるかもしれません。
しかし、「この人にだったら」という相手がいるのであれば、時には今の自分の
思いをはきだすことも大切なのではないでしょうか。
そうすることによって再び元気がわき、「またがんばろう」という前向きな気持
ちになれると思います。