関節痛にはその周囲を解す治療が有効です
- 2024年06月07日
- 以前股関節痛について書きましたが、同じ関節でもここのところ増えているのが、膝関節痛でお困りの来院者様のお話しです。特に60代以上の方が多い事をみても、ある意味加齢による体の変化を前向きに受け入れつつ、生活していく大切さを感じています。近所に住む60代のAさんは、今年3月下旬に初めて来院されました。2月の終わり頃から原因は思い当たらないのですが急に右膝が痛み始めました。ところが、その右膝をおそらくかばいながら過ごしているうちに今度は左膝の痛みをより強く感じるようになってしまいました。整形外科を受診すると左膝の変形が強いと言われ薬を処方されましたがなかなか良くなりません。この頃は正座どころか、階段を降りるのも膝が痛くて不自由だし、歩くのも杖を使わないと困難な状態です。元々動くことがお好きなAさんからは、痛みのためにそれができない切なさと、もどかしさがひしひしと伝わってきました。「一番痛みが気になるのはどこですか?」そう尋ねるとAさんからは、「そう聞かれても正直自分ではどこが辛いのかよく分かりませんが、しいていうと今は左の膝裏が一番かな」という答が返ってきました。広範囲にわたる辛さの中から痛みの一番の原因となっている筋肉を突き止める目的もかねて、Aさんにはベッドに横になっていただき、訴えのあった左の膝裏やその周囲に時間をかけながら、左右のお尻から太股の周囲を経て、脹ら脛部と脛の部にある筋肉の凝っている箇所に対してもじっくりマッサージを行いました。初回の治療でしたがAさんには、「来た時より左膝が伸びた感じがします」という、一定の治療効果を感じていただくことができました。「膝裏の状態がだいぶ良くなったら、今度はやはり左を中心に太股表側の突っ張りが気になり始めました」2度目の来院時にそうおっしゃるAさんに対しその日は、太股の表側と外側に存在していた筋肉の硬い箇所に重点を置きながら、下半身へのマッサージを行いました。ただ特に太股表側の筋肉は大きく厚みがあるため、マッサージだけでは解しきれないのが現状です。案の定3回目の来院時にAさんが、「揉んでもらった次の日は足がスムーズニ出るのですが、なんとなく効果が長続きしません」とおっしゃったので、指が届かない奥深い所の固さを取るのに適している鍼治療をお勧めすると、「実は若い頃にちょっと受けたことがあって」と言いながら、素直に応じてくださいました。この日も太股の表側と外側の硬い箇所に対し、鍼治療とマッサージをしっかりさせていただきました。思った通り、鍼治療の効果は覿面でした。先日6度目の来院となったAさんはうれしそうに、「足の痛みが取れてだいぶ調子が良いです、普通に歩けるようになったし、台所仕事も今までは椅子に座ったり左足の下に板を入れたりしながらしかできませんでしたが、その板もじゃまになったので片付けました。そしてふと毎日行っているラジオ体操では、驚いたことにジャンプもできるようになっていたんです。これだけここで先生に解してもらっている私の足は本当に幸せです」と話し手くれました。関節が痛いと、その関節にのみ意識が傾きがちです。もちろん、変形そのものを改善することはできません。しかし最も大切なのは変形しているかどうかではなく、辛さを感じることなく毎日の生活をいかに快適に過ごせるかではないでしょうか。今回のAさんへの治療を通し、関節痛改善のためにその周囲の硬くなっている筋肉を解すこと、そしてその手段として鍼治療とマッサージがとても有効であることを改めて感じさせていただきました。
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